2013年1月23日水曜日

今週の一枚 BLACK VEIL BRIDES「Wretched and Divine」

このバンドがどんなものかを伝えるには、バンドメンバーの写真を見ていただくのがいちばん。

 

もろです。

ものの見事なLAメタル。

 

初期Motley CrueとかRATTとか、獣っぷり満開なときのWASPとか、あんな感じのメイクで、

曲調、リフ、聴きやすい歌メロ、一緒に歌えるコーラスにいたるまで、徹底的にLAメタル。

 

前作「SET THE WORLD ON FIRE」アルバムからPVとして切られた「Fallen Angel」の、

開き直りというか吹っ切れというか突き抜け具合におどろいて、

でもなんとなく聴くタイミングを失っていて、

今回新作が出たしこれを機に、とアルバムを購入して真正面から向き合ってみたわけやけど。

 

第一印象はあれ?と。

LAメタルちゃうぞ、と。

 

イントロ#1からの#2が、予想外の正統派メタルソング。

サビメロはキャッチーやけどダークで、LAメタルのような明解さじゃなくて。

演奏は思いのほかテクニカルで、このバンドこんなにうまかったっけ?と驚きつつ、

疾走感の気持ちよさとか声の太さもあいまって、

乱暴に例えるならAvenged Sevenfold(以下A7X)のよう。

ギターソロもひっくるめて、A7Xっぽいんよね。

 

もともとA7XってGUN'N ROSESが持ってるロックンロールとかパンク要素に

LAメタル的な毒を含ませて、

欧州メタル、特にBlind Guardionのような展開の妙味を合わせて、

しかもおそらくメンバーがそこまで計算せず(ひょっとしたらBlind Guardianをメンバーは知らない)、

むりやり混ぜこんでできた突然変異的なバンドなわけで。

 

ということは、このアルバムにおけるBlack Veil BridesもBlind Guardianっぽいと言えるし、

もっと言うならHelloweenにも相通じるところがあって、

このアルバム、Helloweenと一緒の売り場で視聴機に入れたら

かなりの勢いで購買意欲をそそるんちゃう?なんてことを思ったり。

 

今回は壮大なストーリーアルバムとのことで、

なんか支配者として教会政府とかいうのがいて、

そいつらに反発するワイルドワンズというのがヒーローで、といった話らしく、

だから音楽面でもただハッピーなヘヴィメタルじゃないのかも。

 

そういうある種の深刻さ、まじめさが根底にあって、

パーティしようぜ、ロックしようぜという能天気さで勝負していないのは続く#3以降も顕著で、

#5なんかはリズムは遅め、サビメロのスケールが大きくて、

このバンドに求められている音とはちがう気がする。

ちがう気はするけど、けっして色物の音ではないし、

メタルファンが鼻で笑い軽んじるようなのではない。断じてない。

 

あのね、ええのよ。

 

アルバムの完成度の高さっていうのは#5とか、続く#6のような、

主題とは別の脇を固める曲がいかに魅力的かで決まると俺は個人的に思ってるんやけど、

#6がまたよくてね。

 

物語の起承転結で言うなら承あたりに位置するのかな?

曲自体がだんだん盛りあがっていく構成で、物語への期待感を煽る役割。

まさにメタル、ライブで大合唱まちがいなしのサビもひっくるめて、よい。

 

その期待感を受けての#8は、

歌いっぷりがBullet For My ValentineかTriviumか、といった雰囲気の現代的メタルソングで、

やっぱりコーラスに掛け声を入れるところは「らしさ」を忘れず、

アップテンポになるソロパートでは、タッピングのツインリードを、でもやりすぎないところにプロ精神が感じられて、

このバンド、こんなにうまいとは思わんかったなぁ。

 

演奏もそうやけど、特にヴォーカルがね。

ルックスは女性受け、はっきり言うと男が嫌いそうな部類なんやけど、

荒々しさと粗暴さにあふれながらも実は丁寧に歌いあげてる歌は、

男リスナーにこそ訴求しうるんちゃうかな。

 

その歌の魅力ががっつり来るのが、#9。

 

バラード調、暗くて陰鬱で、うっそうとした森のような序盤では、

耳元で歌われてるぐらい声の響きが生々しくて、表現力がずば抜けてる。

そこから視界が一気にひらけるサビかものすごく魅力的。

断言してまうけど、めちゃめちゃかっこういい。

この人、歌、うまいわ。

そしてテクニックは抑え目で泣きまくったギターソロ。はまった。ええ曲や。

 

このアルバムは、くり返すけど、ストーリーアルバムということで、

曲と曲の間にSEなんかの演出もふんだんに盛りこまれてて、

でも、ちょっとやってみました、程度のものじゃなくかなり本気。

 

#5とつなげて一曲にしてしまったほうがよかったんちゃうのと言いたくなるほど効果的な#4。

音からかもしだされる退廃の度合いが、実は俺こういうの大好物なんよ、の#7。

そして前半折り返しの#10。

このストリングスは反則やね。主題となるメロディをこういうアレンジで聞かせるところがにくい。

 

後半は#11でいきなりの三連符。

A7X好きなら確実にやられる、ダークかつ耳に残るフックの曲で幕を開けるけど、

やはりこれでしょ、の#13から劇的に、終わりまで一息でつっ走ります。

 

おそらく、#13のような曲こそ、このバンドに求められている音やと思う。

リフ、サビのメロディ、リズム、Bメロからサビ、一回聴いただけで耳に残るサビメロ。

すべてがいい意味で直球のLAメタル。

 

いや、露骨な物真似とか、オマージュという逃げ口上を乱用したパロデイのそれじゃないから、

LAメタルという言葉で表現するのは、もはやちがうのかもしれん。

このバンドをとても好意的に受け入れられるのは、

影響としてのLAメタルはあれど、あくまでバンドならではの音を追及してるからなんよね。

 

楽曲もそうやし、音の作り方も(これは多分にエンジニアの力に拠るところが大きいけど)

スネアは80'sを思わせるドンシャリ気味でありながら、

バスドラは現代ロックのダイナミズムに負けない抜けのよさ、

空間系のエフェクトは控えめ、

それぞれの楽器の粒を立たせたミックスの心地よさで、

そういう意味でもただの80'sフォロワーで片づけるべきではない、気がする。

 

まあそんなことどうでもいいから楽しめよと言わんばかりに#14から最後までがっつり来るんやけどね。

 

やわらかめの小曲で、雲間から光が差し込むような展開で耳を奪われた#14から、

これまたこのバンドらしいアップテンポ、イントロでいきなりテクニカル、

展開はらしさ満載、でもサビはあまり甘くなくて、ソロはひきまくりの#15と来て、

壮大なバラード、#16。

 

#16はね、ロックバラードとはこうあるべし、みたいなお手本のよう。

前半で盛りあげきらないところが、聞き手の心をくすぐるのよ。

こういう芝居がかった世界って、好き嫌いはあるやもしれんけど、俺は好き。

前半のもどかしさが後半で壮大に爆発して、ギターソロも炸裂。

ここまでやられりゃ泣けるわな。

 

で、名曲#18ですよ。

 

そもそも#18は#17とセットで考えたほうがいいし、

アルバムの流れの中で、最後の最後に出てくるから名曲なのだけど、

この曲はね、あかんよ。イントロからぐっと来る。

#10で出していた主題のメロディがここで帰結するところも抜群の演出やし、

ロックソングの勢い、メタルの力強さ、美しいメロディ、

ライブでの盛り上がりも意識したコーラス、すべて内包されてる。

ギターソロからのアレンジもいい。やっぱりこういうバンドはギターが弾きまくってこそやね。

 

当時の空気を経験しているわけではないから

ひょっとしたら的外れなことを言うてるのやもしれんけど、

メタルやロックにかぎらず80'sは、歌ものが最もみがかれた時期だと思っていて、

だからこそ80'sの要素を持ったバンドなりアーティストに惹かれる傾向が俺にはあるんやけど、

80'sの要素をここまでうまくとりこんで自分たちのものにしたバンドというのも

そうはおらんのちゃうかな。

 

PVなどを観たら、外見に拒否反応を示すヒトもいるやもしれんけど、

ロック好きを自認するならぜひ一度お試しを。