2013年6月24日月曜日

今週の一枚 GOO GOO DOLLS「Magnetic」

ただただ、好きなんよねえ、このバンド。

気取った言い方になってしまうけど、
子供の頃に忘れてきた何かを思いださせてくれるような音、
とでも言うべきなのかな。

青臭くてつい照れ笑いを浮かべたり、
たまらなく甘酸っぱかったり、
場合によっては胸がうずく痛みを伴っていたり、
そんな過去をふっと蘇らせてくれる、そんな感じ。

リードトラックの#1はやけにポップで、
今のアメリカの社会情勢が反映されているのかなとも思ったり。
ボンジョヴィの新譜のリードトラックも似たような感じやったしね。
長く陰惨なイラク戦争を経て、ポジティブな未来を築こう、
みたいなのがあるんかな、と。

でもこのアルバム、内容はやはりいつものGOO。
哀愁漂う、そしていろんなもんが去来する、らしさあふれる音。

イントロのアルペジオで、ぐっと来る#2。
ポップなのにもの悲しい#3。
そして二度と戻ってこないものを振り返るかのような#4。
いや、それは歌詞がそういう意味とかではなく、
曲から受けた俺の個人的な印象ってことね。
バラードじゃないのに、ロックソングなのに、
なぜか俺にはそんなふうに聞こえるんよ。
いい曲なんだわ。

あとはつきぬける空のようなイントロとサビの#9とか、
これぞGOOのロックソング!と言いたくなる#11。

#11のこの切なさって何なんやろね。
去っていく何かを見送らなくてはならない無力感というか、
青春ってもんを振り返るときに必ずつきまとう後悔とか未練を、
純度を高めて形にしたような。
こういうのが胸に響くわけです。

そしてこのアルバムでいちばん好きなのが#8。
悲劇的な別れのような、
前向きだけど取り返しのつかない結末のような、
あるいは崩壊からの再生のような。
言葉にできないものが音と音の隙間にびっしりつめられていて、
これはあかんわ。泣ける。泣かずにはいられない。

夏のからっとした日にもいいけど、
長雨の夜に聴いていたい、そんなアルバムです。

2013年6月19日水曜日

今週の一枚 BLACK SABBATH「13」

今週の一枚 BLACK SABBATH「13」

トニー・アイオミのねっとりしたギターと
ギーザー・バトラーのうねりまくったベースの上に
オジー・オズボーンの声が乗りゃ、それはブラックサバスになるわけで。

しかも今回はリック・ルービンのプロデュース。
スリップノット「VOL.3」アルバムでは
すさまじい数の音をひとつずつ分離したうえで躍動感のある音にしてのけ、
メタリカ「デス・マグネティック」アルバムでは
スネアにエフェクトをほどこさなかったりと生々しくも激しい音に仕上げ、
アデル「21」では古いロックの土台に乗せることでアデルを
三段階ぐらいひきあげた、
あのリック・ルービンですよ。

期待すんなっていうほうが無理。

で、音なのですが、
これがまたまごうことなきサバス!

重い。遅い。禍々しい。
とにかく徹頭徹尾、そんな音。
しかも現代的な重さとか遅さじゃなく70年代のサバスそのものの重さ。
音づくりにいたるまで70年代なのがいいね。
音圧だけ現代レベルまであげた70年代の音と言うべきかな。
リック・ルービンの仕事が活きている。

ひょっとしたら若い子には物足りないかもしれんし、
古くさく聞こえるやもしれんけど、
これがオリジネイターなんだよとおっさんは声高に叫びたい。
いや、リアルタイムでは聴いてへんけどさ。

オリジネイターの証拠というか、
サバスらしいこの作品の特徴は、なんと言っても曲が長いこと。
四分台は#4と#6だけ。あとはすべて七分以上。
#1と#2は八分を超える。
これだけでいかにサバスらしい作品かわかるでしょ。

「Black Sabbath」とか「War Pigs」とか、
ああいうのが好きなら確実ににやにやすること請け合い。
音楽性が音楽性だから飛びあがって喜ぶというよりは
うつむいて全身を傾けたくなるという感じかな。

サバスが好きなヒト、
スピリチュアル・ベガーズとかザ・ソードとかで
重く遅いのに目覚めた若い子にもおすすめしたい一枚。
トニー・アイオミとギーザー・バトラーのリフの冴えがね、ぶっ飛んでます。
めっちゃくちゃ気持ちいい。

ただ、買うなら二枚組のデラックスエディションにすべき。

デラックスエディッションは要するに二枚目にボーナストラックを収録ってこと。
昔はそういうのって選考からもれた曲なわけで、完成度は低かったわけですよ。
でも最近はそうでもなかったりして、
何となく一枚だけのものを選んだら後悔するやもという予感もあったので
二枚組にしたんやけど、正解でした。

二枚目の#1はサバスというよりオジーのソロっぽかったりもして、
だからアルバム本編には収録されんかったんかなとも思うんやけど、
この曲が強烈にかっこういいんだわ。
イントロのリフといい歌メロといい、個人的にこのアルバムでいちばん好き。
本編に入っててほしかった。

#2は本編同様のサバス節、重く遅い曲で、これもいいんよね。
#3は#3で、これまたリフがぶち抜けてるえぐさ。
こっちもやっぱり本編に入れててほしかった曲。

てなわけで、
二枚組商法の是非とか効果はさておき、
二枚目に収録されている曲をサバス好き、
ちょっとだけサバスに興味があるロック好きに届かないというのは
非常にもったいないというおっさんのお節介により、
デラックスのほうを心からおすすめします。

2013年6月10日月曜日

今週の一枚 OUTRAGE「OUTRAGED」

このバンドの魅力のひとつは、
無秩序なほどの拡散性にあると思っています。

名作「THE FINAL DAY」が発売されたとき俺は中学三年で、
「日本にこんな強烈なメタルバンドがいたのか!」とぶっ飛んでしまい、
それがあまりに鮮烈だったため次の「SPIT」アルバム以降は
曲の多様化についていけずほとんど聞かずじまいでした。

まだまだ耳と心が若く、ある特定の音のみを追いかけてしまう年頃だったからね。
だからこのバンドの拡散性がとてつもなく魅力的だとわかったのは、
二十周年記念で再発された旧作をじっくり聴いてから。

そういう観点からいくと、
前作「OUTRAGE」アルバムは橋本直樹復帰作ということもあって
直球のごりごりスラッシュメタル路線、
もっと言うなら構成においても曲においても
名作「THE FINAL DAY」アルバムを意図的になぞっていたから、
このバンドの持つ拡散性という部分はさほど出ていなかったかなと。

前作は前作で復帰作にふさわしい、
それでいて歌メロは当時よりはるかに洗練されていて焼き直し感はなく、
ファンが求めていた以上の作品だったわけで、
「THE FINAL DAY」アルバムにすさまじい思い入れがある俺にとって
狂喜乱舞ものの名盤なのは事実なんやけどね。

で、復帰第二作である今回のアルバム。
この拡散性がすさまじい形になってるわけですよ。
なんと言うても#3と#5なわけですよ。

どちらも既存のアウトレイジの音からは離れてて、
#3は、こんなふうに例えると誤解を招きかねないんやけど、
ちょっとだけブラック・ストーン・チェリーのよう。
うねりのある泥臭いリフに男泣きのサビメロがね。
アウトレイジでこういう音が聞けるとは思わなんだ。

#5は、力を抜いた歌いだしからの感情的なサビが、もう最高。
これはバンドの新しい武器たりえるでしょ。
めちゃめちゃいい曲。
しばらくはこの二曲だけを延々と聴いてたほど。
あえてこの曲をPVにしてほしかったくらい。

あとは#9。
アウトレイジのメタル曲で、ここまでサビが記憶に残る曲ってあったやろか。
いや、驚いた。
サビメロに絡んでくる阿部洋介のギターがまた泣けるんだわ。
俺は阿部洋介の荒々しく粘っこいリードギターが大好きなんだなと再確認。

他にも爆走曲#4や、
前作から続く直球アウトレイジ曲の#7、
へっぽこベース弾きとしてはこういうのに憧れるんですよ!な#8、
もちろん問答無用な#1など、
大音量必須な音楽が好きでたまらない聴き手を的確にくすぐってくれます。

めっちゃかっこいいよ。

何もかもを吹き飛ばしたいヒトに聴いてほしい一枚。

日本のバンドということで、
メンバーのお名前に敬称をつけるべきかとも思ったんやけど、
「さん」をつけると知人みたいになってまうし(一切面識なし)、
「氏」をつけるのも何だかなあとなってしまうため、敬称略でお届けしました。

2013年6月3日月曜日

今月の一冊 ロザムンド・ラプトン「シスター」

失踪した妹を捜す主人公ビアトリスの語りによって進んでいく物語。

時間軸がふたつあって、
ひとつは事件の真相をライト検事に話している現在。
ひとつは妹・テスの失踪を受けてイギリスへ戻ってきた過去。
合間にテスとの昔の会話が、ふと思いだしたみたいに挿入される。
 
すべての時間軸がテスに語りかける文体で統一されているから、
場面転換は多いけれど読みやすく、
けっして動きの激しい物語ではないんやけれど読む手がとまらなくなるという
ちょっと不思議な物語だったりもする。
 
これは、ちょいとネタバレせんと書けません。
ネタバレといってもあらすじを読めば何となくそうなんやろなあと
想像できる範囲のものやけれど、
サスペンス色のある物語なので読もうと積んでいる方はご注意を。
 
 
妹・テスが失踪したということで姉であるビアトリスがロンドンに戻るんやけど、
結局、妹のテスは死体で発見されます。
 
で、テスはすでに出産していたこと、
死産だったこと、
産褥精神病にかかっていたことが発覚し、
現実に耐えきれず自殺したのだろうという結論に警察も周囲も至る。
 
でもビアトリスは、テスが自殺したとは信じられない。殺されたんだと訴える。
しかしながら妹の自殺で混乱している姉というふうに周囲からは見られてしまい、
自分の主張が届かない。
婚約者にも母親にも理解してもらえない。
 
そこでビアトリスはひとり、
テスに何が起こったのか調べ始める。というのが大まかな筋。
 
テスがなぜ死んだのかという謎。
姉妹の関係性という人間ドラマ。
このふたつが物語の縦糸
と横糸になっているんやけれど、
個人的には、
提示された謎を玉葱の皮のように剥いでいくような文章が魅力的だった。
 
謎の剥ぎ方がめちゃめちゃ丁寧なんよね。
 
丁寧な文章かつ過不足もないからまどろっこしさが一切なくて
ものすごく読みやすい反面、
静かな文体で優しく導いてくれるのに
導かれる先にどんどん不穏な分厚い雲がたちこめていくもんやから、
なかなか本を閉じることができなくて。
 
一方で、この小説には技巧を重視している側面もあって、
中盤以降、真相はどこにあるのか、
物語はどこへ行き着くのかと読み手を不安にさせつつ、
最後までぼやかして惑わしたあげく、
つきまとっていた灰色の世界を一気に毒々しく色づかせる結末が。
ものすごく鮮烈なのです。
 
そのあたりはここで書いたらおもしろくもなんともないので割愛。
 
著者は姉妹関係を主軸に書いたらしいけれど、
サスペンスとして味わうのもいいかな、と。
むしろ俺はそっち方面の小説として大いに楽しめました。
 

本編とは関係ないけれど、
巻末に著者インタビューが掲載されていて、
ちと長いけれどその一節を引用。
 
質問:作家を志す人にアドバイスはありますか?
とにかく挑戦して! たとえ断られても、挑戦を続けて。わたしが台本作家の世界に
「入りこむ」ことに成功する前に受け取った断りの手紙を全部つなげたら、
小さな部屋の壁を埋め尽くすぐらいになるはずです。
だから小説を書くようになった時には覚悟ができていました。
作家に、あなたの努力は無駄ですよと告げることが仕事のような人たちもいるのですから。
自分の本の、絶対に譲れないところは守ると同時に、
書き直しが必要となれば、たとえ大幅でも、自分が言いたいことが変わらない範囲で
書き直す勇気をもつことだと思います。運不運はあると思います。
わたしの場合、原稿を持ちこんですぐに編集者のエマ・ベスウェザリックに出会えたことが、
ラッキーだったと思っています。
 
あなたの努力は無駄ですよと告げることが仕事のような人たち。
それ、俺の中にいつもいて、誰よりも辛辣に、俺へ向けて言い続けてるなあ。
なんてことも思ったり。