2013年6月3日月曜日

今月の一冊 ロザムンド・ラプトン「シスター」

失踪した妹を捜す主人公ビアトリスの語りによって進んでいく物語。

時間軸がふたつあって、
ひとつは事件の真相をライト検事に話している現在。
ひとつは妹・テスの失踪を受けてイギリスへ戻ってきた過去。
合間にテスとの昔の会話が、ふと思いだしたみたいに挿入される。
 
すべての時間軸がテスに語りかける文体で統一されているから、
場面転換は多いけれど読みやすく、
けっして動きの激しい物語ではないんやけれど読む手がとまらなくなるという
ちょっと不思議な物語だったりもする。
 
これは、ちょいとネタバレせんと書けません。
ネタバレといってもあらすじを読めば何となくそうなんやろなあと
想像できる範囲のものやけれど、
サスペンス色のある物語なので読もうと積んでいる方はご注意を。
 
 
妹・テスが失踪したということで姉であるビアトリスがロンドンに戻るんやけど、
結局、妹のテスは死体で発見されます。
 
で、テスはすでに出産していたこと、
死産だったこと、
産褥精神病にかかっていたことが発覚し、
現実に耐えきれず自殺したのだろうという結論に警察も周囲も至る。
 
でもビアトリスは、テスが自殺したとは信じられない。殺されたんだと訴える。
しかしながら妹の自殺で混乱している姉というふうに周囲からは見られてしまい、
自分の主張が届かない。
婚約者にも母親にも理解してもらえない。
 
そこでビアトリスはひとり、
テスに何が起こったのか調べ始める。というのが大まかな筋。
 
テスがなぜ死んだのかという謎。
姉妹の関係性という人間ドラマ。
このふたつが物語の縦糸
と横糸になっているんやけれど、
個人的には、
提示された謎を玉葱の皮のように剥いでいくような文章が魅力的だった。
 
謎の剥ぎ方がめちゃめちゃ丁寧なんよね。
 
丁寧な文章かつ過不足もないからまどろっこしさが一切なくて
ものすごく読みやすい反面、
静かな文体で優しく導いてくれるのに
導かれる先にどんどん不穏な分厚い雲がたちこめていくもんやから、
なかなか本を閉じることができなくて。
 
一方で、この小説には技巧を重視している側面もあって、
中盤以降、真相はどこにあるのか、
物語はどこへ行き着くのかと読み手を不安にさせつつ、
最後までぼやかして惑わしたあげく、
つきまとっていた灰色の世界を一気に毒々しく色づかせる結末が。
ものすごく鮮烈なのです。
 
そのあたりはここで書いたらおもしろくもなんともないので割愛。
 
著者は姉妹関係を主軸に書いたらしいけれど、
サスペンスとして味わうのもいいかな、と。
むしろ俺はそっち方面の小説として大いに楽しめました。
 

本編とは関係ないけれど、
巻末に著者インタビューが掲載されていて、
ちと長いけれどその一節を引用。
 
質問:作家を志す人にアドバイスはありますか?
とにかく挑戦して! たとえ断られても、挑戦を続けて。わたしが台本作家の世界に
「入りこむ」ことに成功する前に受け取った断りの手紙を全部つなげたら、
小さな部屋の壁を埋め尽くすぐらいになるはずです。
だから小説を書くようになった時には覚悟ができていました。
作家に、あなたの努力は無駄ですよと告げることが仕事のような人たちもいるのですから。
自分の本の、絶対に譲れないところは守ると同時に、
書き直しが必要となれば、たとえ大幅でも、自分が言いたいことが変わらない範囲で
書き直す勇気をもつことだと思います。運不運はあると思います。
わたしの場合、原稿を持ちこんですぐに編集者のエマ・ベスウェザリックに出会えたことが、
ラッキーだったと思っています。
 
あなたの努力は無駄ですよと告げることが仕事のような人たち。
それ、俺の中にいつもいて、誰よりも辛辣に、俺へ向けて言い続けてるなあ。
なんてことも思ったり。