2014年2月25日火曜日

今週の一枚 DIANE BIRCH「Speak A Little Louder」

ひとめぼれ。ならぬひとぎきぼれ。

リードトラックの#3がね、静かな曲なのですが、がつんと来まして。

この曲、十年以上前にイギリスで活動していた
boaというバンドの「Duvet」という曲に雰囲気がちょっとだけ似ていて、
その「Duvet」が俺は好きなのでがつんと来たということだったりもしまして、
そういう意味で入り方としてはちと邪道だったりもするのですが、
それはそれとして、淡々としたメロディものすっごい力で歌いあげていて、
いい曲なのですよこれが。

ちなみにboaというバンドはポール・ロジャースの娘と息子が組んだバンドであり、
日本ではアニメ「lain」の主題歌だった、と説明すれば
わかる人にはわかるのではないかと。

それでまあ#3を目当てにアルバムを購入したわけですが、
アルバム全体の印象としては色とりどりで、
ロックアプローチの曲からポップな楽曲、ピアノバラードまであり。
その中で興味深いのは濃厚に漂う80'sの香りかな。

#6などはムードたっぷりにした「Maniac」のように聞こえるし、
#7は「Eye Of The Tiger」みたいで今にもロッキーが走りだしそうやし、
#8にいたってはデズモンド・チャイルド?と言いたくなったり。

模倣というわけではなく
意図的に80'Sの雰囲気を持ちこみ、
さらにアレンジや各楽器の音もあの時代に近づけることで新鮮さを演出していて、
これはダイアン・バーチの声を生かすのに適していてうまいなあと。
その時代の音が好きというのもあって、
アルバムを購入した直後は上記三曲を何度も聴いてしまったほど。

でも、この人の真骨頂はピアノバラードなんよね。

#5とか#10とか#11とか、
デラックスエディションのみの収録なのかもしれないが#16とか。
何の飾りもない裸の楽曲を
優しいけれどつきつけられるような強さの声が自由に泳いで、
それは時につき刺さるけれど心地よくもあり。

すべての楽器や音が出るものの中で最も魅力的なのは人間の声だと
俺は常々思っているのですが、
その声を存分に堪能させてくれるアルバムです。
彼女の存在感、表現者としての卓越した能力が強烈に響きました。

ジャズからポップス、ロックまで、ジャンルに関係なく
聴き手を選ばずおすすめできる一枚です。

2014年2月2日日曜日

今週の一枚BIRDY「BIRDY」「FIRE WITHIN」

デビューアルバム「BIRDY」は彼女が十五歳のときの作品だそうで。

最新である2ndアルバム「FIRE WITHIN」の日本発売に合わせて流れていた
「Skinny Love」のPVを観て、ああこれは良いな、と二枚購入。

まず1st「BIRDY」について。

個性的な女性ヴォーカルは様々いるけれど、
バーディ、特に「BIRDY」アルバムにおさめられている歌について言うなら、
アデルのように貫禄があるとか完成されているというわけではなく、
フローレンス・アンド・ザ・マシーンのフローレンスさんのように
自身の内的世界とそれを表現する手段が確立されているわけでもなく、
エミリー・サンディのように技術的にずば抜けているわけでもない。

むしろ何者にもなれない曖昧さとか、
何者かになろうとするあがきとか、
そういった脆く、何の飾りもない等身大の姿が映しだされているように
俺には聞こえます。
これこそがバーディの歌の魅力なのではないかなと。

で、PVでやられた「Skinny Love」は
1stアルバム「BIRDY」に収録されています。
吹けば飛ぶような弱さと、逆風をにらんでいるような強さと、
包みこむような優しさが一曲の中に含まれていて、
何とも言えないすばらしさ。
ピアノのペダルの音とかリップノイズも録音されていて、
そういう意味でも等身大の雰囲気なのですよね。
現代音楽でこういう録音をするところが、うまいし、にくい。

このアルバムは一曲を除きカバー曲なので
楽曲のよさについては言及までもないのですが、
気に入った曲を列挙すると、
淡々とした歌が広がっていく「The District Sleeps Alone Tonight」とか、
装飾のなさが声を際立たせている「I'll Never Forget You」、
「Skinny Love」同様、じんわりと胸に染みてくる「Shelter」、
序盤のメジャー進行から中盤でマイナー進行に転じるにつれて
歌に憂いとか、悲観と楽観が入り交じり、
ひとつの形に結実していって、
この流れに耳も脳も体のどこかもしびれる「Terrible Love」など。

あと、1stで言うなら、
「Skinny Love」以上に惚れた「People Help The People」ははずせません。

この曲は、強烈。
完全に好み。
前述した、何者にもなれず何者かになろうとしている、という印象を、
俺はこの曲を聞いてさらに深めました。
そもそもオリジナルのCHERRY GHOSTがものすごく良いのだけれど、
この曲を選択するところが、なんというか、よくわかっている!

そいでもって2nd「FIRE WITHIN」。
こちらは1stで聞くことのできた曖昧さ、危うさから脱却し、
なるべき自分が見えるようになったかのような、
力強い歌を聞くことができます。
それもそのはず、この2ndはバーディことジャスミンさんが
作曲にがっつりかかわっているからね。

音楽的に言うと、
フローレンス・アンド・ザ・マシーンに近づいたかなというのが個人的な感想。
一曲目の「Wings」とか三曲目の「Light Me Up」などが顕著。
まんま同じというわけではないけれど、
ロックアプローチのやり方とか盛りあがりを構築する手法がね。
これはバーディの声に合っていて、ありではないかと。

もちろん作品そのものが1stと違うわけではなく、
成長著しい「Heart Of Gold」とか、
優しく美しい「All You Never Say」、
陰鬱さすら漂う「Strange Birds」、
1stアルバムが好きだったら大好物でしょ、の「No Angel」とか、
この曲はデラックスエディションにしか収録されてないのかな、
三分ちょっとの中にありったけの劇的な要素をつめこんだ「Home」などで
すばらしい歌を聞くことができます。

一方、アレンジという観点で1stになかったのが「Words As Weapons」。
カントリー、
いや英国出身だからアイリッシュトラッドとか
ケルト音楽として考えるべきか。
独特の音色のアコースティックギターがあり、
そこにねじれるように重なってくる歌が胸に刺さり、
厚い灰色の雲を思わせる曲調も、根が暗いと言われかねないが、
ものすごく好き。
途中のさりげないピアノなども含め、
このアルバムでいちばん好きかも。

興味深いのは七曲目の「Maybe」。

この曲は作中でとりわけ異彩を放ってます。
だって唐突にアメリカっぽい明るさの、ギター弾き語り曲なんやもの。
まるでシェリル・クロウやん、なんで?と違和感ばりばりになったのも事実。

でもよく考えればバーディことジャスミンさんはまだ17歳なわけで、
もしかしたら等身大のジャスミンさんの姿とは、
暗めの楽曲にこめられたはかない歌とか、
前作のような脆さを感じさせるところだけでなく、
こういう曲にもあるんちゃうのかなと思うに至り。

だって17歳の女の子やもの。
楽しく笑ったり馬鹿なことではしゃいだりするわな。
それをそのまま歌にしてもよいわな、と。
そういう気持ちで聞くと途端に魅力的になったりするから不思議。

今年に入ってから二枚ともヘヴィローテーション中。
女性ヴォーカルにめっぽう弱い方、
めっぽうじゃないけどそこそこ弱い方、
マイナースケールが大好きな方はぜひ。